何時の頃だったか忘れたが、登山ツアーの添乗員から、花を見るなら福島の花見山という言葉を聞いた記憶がある。如何にも即物的な山の名前で些か面映いが、心の奥で少しく気にはなっていた。調べてみると、写真家の故秋山庄太郎氏が「福島に桃源郷あり」と絶賛した山だと言う。カメラ小僧の私としては、これは何んとしても一度は訪れてみない訳にはいかない
ということで、ツアーバスは何時もより早い6時45分に16名の参加者を乗せて新宿を出発する。途中池袋からの残り9名の参加者を乗せてバスは東北自動車道に乗る。那須高原SAでトイレ休憩を取った後、福島西ICを降りて国道115号線を福島市内へ向かうが、市街地に入ると花見渋滞に巻き込まれ、花見山公園駐車場のスタート地点に着いたのは新宿を出てから5時間後の11時45分である。雲は多いものの、時折雲間から明るい太陽の日差しが射す暖かい天気で気持ちが良い。
スタート地点は噂に違わずもの凄い観光客の数である。色取り取りの観光バスが何十台も駐車し、路線バスはピストン輸送で長蛇の列の観光客を捌いている。そんな中、我々参加者25名も添乗員に従って人混みを掻き分けスタートを切る。
ここ花見山公園は、地元の花木の生産農家の方が「みんなにきれいな花を観てもらい心が安らげば」と個人所有の山に花木を植え、丹精込めて作りあげた公園で、梅、ハナモモ、数種類の桜、レンギョウ、ボケ、サンシュユ、モクレンなどの花々がいっせいに咲き競う、まさに「桃源郷」の言葉にふさわしい山なのである。
観光客が余りに多すぎるのは如何ともし難いが、それを差し引いても花々の競演は実に見事と言うしかない。左程高くない里山程度の低山であるが、山肌は隙間が無いほど花に埋め尽くされ、サンシュユ、レンギョウの黄色、ボケ、ツバキの赤、ソメイヨシノ、ヒガンザクラ、ハナモモのピンク、ハクモクレンの白と、見事な彩で錦を織り成してる。カメラの被写体としては申し分ないが、じっくり3脚をセットして撮るなど、悠長なことが出来ないのが悔しいところである。
人混みを掻き分け小1時間ほど花を愛でながら山道を登る。天気はかなり回復し、暑い日差しに汗が滲み始める。60分コースを回り終え、一旦花見山公園の観光案内所前に全員集合する。点呼をした後、今度は花見山を離れ、周辺のウォーキングトレイルにスタートを切る。
花見山周辺は花見山ほど花木は多くないが、それでも花見山では見ることができなかったカタクリ、ツクシ、フキノトウなどの春の山野草が可愛らしく迎えてくれる。併せて、観光客はこちらまで足を延ばさないので、のんびりと自然を満喫し農村の風情を味わいながら歩くことができる。途中、花見山公園とともに福島市内のお花見スポットとして知られている茶屋沼公園に立ち寄り、1時間も歩けば最初のスタート地点である花見山公園駐車場に戻ることになる。
約2時間の花見山桃源郷ウォークを終えると、次は日本三大桜で有名な三春の滝桜を見学に行くことになる。東北自動車道郡山東ICから磐越自動車道に乗り、船引三春ICで降りると小一時間で滝桜のある福島県三春町に着く。滝桜は高さ12m、根回り11m、樹齢1000年以上の紅枝垂桜(ベニシダレザクラ)で、平成2年に新名木百選に認定されているという由緒正しい桜である。ところが、こちらの桜は、全体が赤く色付き、蕾も大きく膨らんで数輪がほころび始めているものの、開花とまではいかない状態で、些か拍子抜けの見学となってしまった。ちなみに、日本三大桜とは「福島県
三春滝桜」「岐阜県 薄墨桜」「山梨県 神代桜」の三箇所の桜を言う。
滝桜は残念であったが、天気も良く、花見山桃源郷に遊び、ハイキングで汗を流し、それなりに満足のいく一日であった。帰りは三度東北自動車道に乗り、缶チューハイで一人祝杯をあげながら20時30分池袋に降り立ったのだった。