先々週までの凍て付く寒さがあっという間に遠のき、先週辺りから暖かい日が続いている。この時期になると、毎年決まって出掛ける場所がある。それは春の山野草の中でも、まだ寒さ厳しい時期から花を付ける「節分草」を愛でる山歩きである。昨年は暖冬の影響で、この時期既に「節分草」は全滅と言う悔しく寂しい思いをした。今年は寒さが厳しかったので大丈夫だとは思うが、先週からの暖かさがこの花の開花にどう影響しているか些か心配である。
前日の激しい雨が嘘のように上がり、朝から青空が顔を覗かせている。節分草を愛でるバスツアーは35名の参加者を乗せて新宿を8時40分に出発する。バスは関越自動車道に入ると途中高坂SAでトイレ休憩を取り、渋滞に巻き込まれながらも花園ICを降りて、やっとのことで12時ジャストに両神の「節分草園」に着く。
ここでの休憩は40分しかない。トイレに行くのも煙草を吸うのも後回しにして、私は一目散に園内へ足を踏み入れる。この暖かさに花の付きが心配されたが、目を凝らして見ると、あの小さな清楚で可憐な花が辺り一面顔を覗かせているではないか。それからは脇目も振らず接近戦でシャッターを切り続けた。久し振りに出逢った恋人に熱き口づけの雨を降らせるが如く。
図鑑によると、節分草はキンポウゲ科セツブンソウ属の多年草で、関東地方以西に分布し、石灰岩地域に多く見られるそうである。高さは10cmほどで、花期は2〜3月で直径2cmの白い花を咲かせる。花弁のように見えるのは萼(がく)片で、和名は、早春に芽を出し節分の頃に花を咲かせることからついたらしい。ただし、ここ秩父地方は冬の寒さが厳しいため、どうしても開花が1ヶ月遅れることになる。可憐な花は人気が高く、現在は、乱獲や自生地の環境破壊によって希少植物になっているという。正直、このような保護地でないと見れないとは何とも悲しいことである。
40分の休憩時間もあっという間に過ぎ、後ろ髪を引かれる思いで再びバスに乗り込む。バスは次の目的地「四阿屋山」(あずまやさん)福寿草ハイキングコースへ向かう。ここからは添乗員が従わないフリーなハイキングとなり、午後4時20分までに帰りのバスの待つ両神温泉薬師の湯まで戻れば良いという自由時間となる。
どちらかと言えば鉢植えで何処でも見られる福寿草は余り興味の対象ではないし、かと言って福寿草以外さりとて見るべきものもないので淡々と先を急ぐ。コースは一部急坂もあり、照りつける太陽の暑さに汗が噴出す。薄手のフリースを着ているだけだがそれでも暑い。そろそろTシャツでの山登りの時期になってきたことを実感する。
コースを一巡し、後は下山するだけである。昨年は下山路に案外苦戦した思い出があるが、今回は体調が良いせいかスピードが出る。薬師コースの急な階段を飛び跳ねるようにハイスピードで下り、かなり長丁場と思われた下山路も僅か25分程度で下ってしまった。その後に入った薬師の湯は、流した大量の汗に比例して実に気持ちが良いものだった。