年月日 平成19年7月7日(土) 天候 雨 場所 山梨県増穂町 ルート 池の茶屋→(50分)→櫛形山→(35分)→裸山→(15分)→アヤメ平→(40分)→見晴平→(60分)→県民の森
歩行距離(5.5キロ)、所要時間(4時間00分)その他 新花の百名山「櫛形山」に登ってきました。梅雨真っ只中とあって天気には恵まれませんでしたが、霧に包まれた原生林と、それに絡みつくサルオガセが幽玄の世界を醸し出していました。東洋一と言われるアヤメの大群生は鹿の食害に会い、ほとんどその体を成していませんでした。下りは北尾根登山道を標高差1000m下って帰りましたが、余りの長丁場に体調を崩す一場面も。勇壮な白峰三山も眺めることが出来ず、このままでは消化不良になりそうです。近い将来再チャレンジをすることにしましょう。
彼此3年くらい前になるだろうか、乗り込んだタクシーの運転手とどういう訳か山の話になり、花を見に登るなら「櫛形山(くしがたやま)」という情報を貰った。その後、その山に登るべくいろいろと調べてみたが、公共交通の便が極端に悪く、車を持たない私はツアーに頼らざるを得ない現実が明らかになった。仕方なくネットやパンフで探し回って、やっと見つけた「櫛形山」登山ツアーに申し込んでみたが、参加者が集まらなかったらしく残念ながら催行不可になった悔しい思い出がある。それがもう1年前のことになる。今回は今のところ催行不可の連絡は入っていない。積年の思いが遂げられれば良いのだが。
嬉しいことに催行不可の連絡は入らなかった。ということで、今回は久しぶりにM社のツアーで出かけることにする。25名の参加者を乗せてバスは新宿を7時半に出発する。天気は雨こそ降っていないが、梅雨独特のぶ厚い雲が空一面を覆っている。バスは中央高速釈迦堂SAでトイレタイムを取った後、甲府南ICを降りると一般道をクネクネと走り、南アルプス市出身の画家「名取春仙」の画業を紹介する春仙美術館駐車場で停車する。我々はここで一旦下車し、何故か5台の大型タクシーに乗り換えて櫛形山に向かうこととなる。ところが、この頃から雨が本降りとなり始めたのだ。
タクシーは櫛形山林道から丸山林道に入り、更に峠の茶屋林道に入る。林道は徐々に狭くなり、タクシーに乗り換えた理由がここでやっと理解できた。しかし、その車のすれ違いもままならない片側が切れ落ちた狭い林道に、櫛形山登山のための行き帰りの乗用車の列が遭遇したからさあ大変。ぬかるんだ林道上で暫し睨み合いが続いたが、地元のタクシーの運ちゃんの誘導でどうにか難所を抜け出し、登山口のある峠の茶屋駐車場に午前11時にやっと到着した。
駐車場にある非難小屋で慌しく昼食と着替えを済ませると11時20分にはもうスタートを切る。ここが標高1850mで櫛形山山頂が標高2052mであるので、その標高差は僅か200mしかない。楽勝と思いきや、ペースの早さに雨具を着けた不自由さも加わって案外きつい。雨具の中も外もずぶ濡れの状態で50分かけて山頂に立つ。
櫛形山は南アルプス山系に属し、甲府盆地の西に位置する標高2052mの山梨百名山の一つで、その名の通りつげ櫛を伏せたような形をしている。田中澄江著による「新・花の百名山」にも紹介されていて、東洋一といわれる約30万本のアヤメの群生地として有名で、マイヅルソウやアツモリソウなど亜高山帯の植物も見ることができるという。
その櫛形山の山頂は鬱蒼とした樹木に覆われ眺望は全く利かない。雨模様の今日は霧も深く幻想的な雰囲気が漂う。山頂で暫く足を休めるが、数多くのツアーパーティーが次から次へと山頂に到着し、かなりの賑わいとなる。う〜む、私の抱いていた落ち着いた櫛形山のイメージとチョッと違うぞ。さあ、眺望も望めないので腰を上げ、裸山(2003m)を経由しアヤメ平に急ぐことにしよう。
櫛形山から裸山へはツガ、オオシラビソ、カラマツの針葉樹の原生林の中を歩く。濃い霧が立ち込め、木々の枝からサルオガセが長く垂れ下がる姿は、正に深山幽谷の世界である。サルオガセは花の咲かない植物で、苔に近い仲間の地衣類に属し、空気中の水蒸気を吸って生きているため、空気が澄んでいないと育たないというデリケートな植物だ。
裸山からアヤメ平に向かうに従って花の種類が増えてくる。雨も小止みになり薄日も射してきた。登山道沿いにはキバナヤマオダマキ、グンナイフウロ、オオバギボウシ、カラマツソウ、キンバイソウなどが我々を出迎えてくれていて、さすがに花の種類は多い。ところで、突拍子も無くここで苦言を呈するが、今回のクルーは自分の仕事を全うするのが先決で、花を愛でることにまで気が回らないようだ。休憩もほとんど取ることなく、ただがむしゃらにポイントを目指すだけで非常に慌しく余裕がない。よって、花の百名山なのに今回は残念ながら花の写真はほとんど無い。先を急ぐ余り、花を撮る機会がほとんど無かったためだ。あっても歩きながら撮ったものでブレていて使用に耐えないのが本当に悔しい。花の百名山に登って花を愛でずに終わろうとはなんともはや。
そうこうするうちにアヤメ平に到着する。一時は東洋一を誇ったアヤメの大群落も最近は全く見られないという。今回もその大群落のかけらさえも見つけることができない。その原因の一つが鹿による食害らしい。食料を求めて熊が麓に出没するのと同様、鹿も本来の樹皮を食する食性が、間伐などの影響で花にまで手を出さざるを得なくなったようだ。素人考えであるが寂しいことである。
目の前に寂しく数本咲くアヤメをカメラに収めると、ここからはいよいよ標高差1000mもの下りとなる。雨にぬかるんだ北尾根登山道を下るのだが、今回は最初からアイゼンを装着しているため滑ったり転んだりすることは全く無い。しかし、如何せん1000mは長すぎる。おまけにタフなクルーは休むことを知らないらしい。標高差570mの晴れていれば富士山の眺望が素晴らしいという「見晴平」までノンストップで下る。膝が笑い、下りなのに息が切れる。
「見晴平」で10分ほど休むと、無常にもまたクルーの号令が響く。再び残り標高差430mをただただノンストップで下る。雨もあがり、雨具の上は脱いでいるが、汗が滝のように流れ落ちる。大量の汗を掻いたのが原因かどうかは分らないが、途中から極端に体調が悪くなってきた。膝が笑い息切れするのはまだしも、熱中症の症状なのか頭が朦朧として眠気が襲ってくる。経験則からこれは休むに限る。それからは最後尾から写真などそっちのけで休み休み下り、どうにか午後4時にバスの待つ「県民の森グリーンロッジ」にゴールしたのだった。
帰りは地元温泉「まほらの湯」で汗を流す。最近に無く大汗を掻いたようで、ズボンも本来の色が汗ですっかり変色してしまっている。下着は着替えを持参していたものの、ズボンまでは考えていなかったため、風呂上り後も仕方なくずぶ濡れのズボンのままバスに乗り込み新宿を目指したのだった。ただし、新宿に着く頃にはすっかり乾いてしまっていたのだが(笑)。
積年の思いの櫛形山に登ることができた。雨に祟られ、亜高山植物は眺めるのみ、アヤメは全滅という残念な結果となってしまったが、じっくり登れば、見応え、歩き応えのある素晴らしい山のように思える。しかし、アヤメの季節を過ぎると櫛形山登山のバスツアーは一切無くなってしまい、翌年のこの季節まで待たなくてはならないのだ。季節外れにタクシーを使ってまで単身で登る経済的余裕など何処にも無いので、当分はバスで行ける近県の花の山を楽しむことにしよう。