年月日 平成19年5月24日(木) 天候 快晴 場所 群馬県利根郡片品村曲沢 ルート 歩行距離(0キロ)、所要時間(2時間) その他 東京電力主催の「ブナ植林ボランティア」なる無償の奉仕活動に参加してきました。尾瀬の戸倉山林の森をより水源涵養機能の高い理想的な森林とし、水源の森を守っていくために、東京電力は平成9年からボランティアの力を借りてブナ植林活動を行っています。ブナは早いものでも、芽生えてから40〜50年しないと花を着け、実を結ぶようにはならないといいます。高さは80年から100年、太さは110年から130年位成長を続け、最大で高さ35m前後、太さは直径1.5m以上になることが知られています。私が植えたブナなどの苗木が一人前に成長するまで、私は生き長らえていないでしょうが、遥か別の次元から静かに成長を見守ってあげたい優しい気持ちになりました。
山登りやウォーキングやハイキングを彼此130余回も続けているが、何時も自然の恵みを頂戴するばかりで、自然のために何もお返ししていないのに遅まきながら気付いた。山に登り、綺麗な空気を胸いっぱいに吸い、フィトンチッドのシャワーを浴び、雄大な眺めに癒されているのに、今まで礼を失していたのが恥ずかしい気がする。何かしら自然に対し恩返しが出来ないものだろうか、と、そんな事をつらつら考えていた矢先、尾瀬の群馬県側を管理する東京電力のWebサイトで「ブナ植林ボランティア」なる無償の奉仕活動があることを知った。
尾瀬に隣接する広大な尾瀬戸倉山林は、利根川水系片品川最上流部に位置し、東京電力の貴重な水源であるとともに、首都圏の水需要を賄う「緑のダム」である。戦後復興期、首都圏の木材需要に対応するため多くの木が伐り出され、跡地には生育の早いカラマツが植えられた。東京電力は水源涵養林としてこの森を大切に保育してきたが、カラマツ人工林の中に成長が芳しくない箇所があるとの調査結果を受け、そうした場所には、本来この場所にあったブナに植え替えていくことにした。その植え替え作業にあたり、ボランティアの方々の協力を頂くことにしたい。と東京電力は「ボランティア概要」の中でこう述べている。この趣旨に甚く賛同しすぐさま応募したところ、660名もの応募者の中から私もその一人に選ばれたのだ。今日は自然の恵みを享受するだけの立場では無く、自然へ奉仕する立場で活動に参加してみることにする。
平日の今日、通勤途上のスーツ姿のサラリーマンに後ろめたさを感じながらも、私は山歩き姿で6時32分東京駅発上越新幹線「たにがわ401号」に乗車する。東電の設えた送迎バスの待つ「上毛高原駅」までは約1時間20分の行程だ。天気は抜けるような快晴で、炎天下では30℃を超えるかも知れない今日の植林作業は、殊更厳しいだろうことは予想に難くない。
上毛高原駅着は7時50分。ここから42名の参加者を乗せてバスは一路植林作業地へと向かう。東電のスタッフに聞いたところ、他の集合場所や現地からの参加者も含め総勢100名程度になるという。現地からは「尾瀬高校」の自然環境科の3年生も体験学習のため大勢参加しているらしい。
現地着は9時50分。場所は群馬県利根郡片品温泉から尾瀬沼への登山口で有名な大清水へ向かう県道401号線(沼田街道)の途中にある荷鞍山という山の東斜面で、曲沢(まがりさわ)と呼ばれるカラマツやブナの木々に覆われた明るい森の中だ。しかし、実際の作業地はここから約1キロ林道を登ったところらしく、少々汗を掻きながら作業地へ向かう。道端には黄色いキケマンの花の群生が我々を出迎えてくれていて何となく嬉しい。
多くの東電スタッフに迎えられて作業地へ着くと、一先ず設えられたテントに荷物を置きスタンバイする。暫く待つと、東電のアイドル竹内純子(たけうちすみこ)さんの挨拶で一連の作業手順の説明が始まる。
ところで、竹内純子さんと言っても尾瀬をご存じない方には未知の御仁だと思われるので、ここで説明を加えておきたい。彼女は平成6年4月東京電力に入社後、平成11年7月に同社初の「人材公募」に応募し、東電所有地である尾瀬の自然保護活動担当となった女性で、尾瀬の木道、公衆トイレ等の公共的施設の整備や、荒廃した湿原の回復作業に取り組む一方、「みんなの尾瀬をみんなでまもる」を提唱し、今回の「ブナ植林ボランティア」や尾瀬のゴミを拾う「グリーンボランティア」など、市民と共同した活動を積極的に展開しているアクティブな女性である。その活動ぶりは東電のWebサイトやパンフレットにも詳しく説明がなされており、そのお顔立ちはどことなくマラソンのQちゃんにも似ていて、フアンも多い愛らしい素敵な女性である。実は私もそのフアンの一人なのだが(^^;;)。
竹内さんとスタッフによる一連の作業手順の説明が済むと、10名程度の班に分かれていざ作業スタートである。3班の私は東電スタッフの班長を先頭に小高い山の中腹の作業場所へと向かう。作業場所は班ごとにロープで区画整理されており、まずはその中の「地ごしらえ」からスタートする。「地ごしらえ」とは斜面に散らばる枯れ木や倒木、そして朽ちた切り株などを取り除き整地することなのだが、枯れ木と思いきやまだ深く地中に根を張っているものも多く、予想に反しかなり力仕事で案外手こずる。30分ほどで「地ごしらえ」を終えると、一旦下山し、水分を補給して次の作業手順に取り掛かる。
次は植林する苗木と鍬(くわ)とスコップを受け取り、更に炭の粉とピンクのリボンを持って再び中腹まで登る。苗木は「ブナ」「トチ」「ヤマザクラ」「ミズナラ」「カエデ」の5種類だが、説明を受けてもまるで枯れ木のような苗木は皆同じように見えて余り区別がつかない。まあ、種類によって植える場所が決められてる訳でも無いので分からなくても良しとすることにしよう(^^;;)。
作業場所では東電スタッフによる植え方の実技指導がある。まず鍬で40p四方の正方形を地面に刻み、更にスコップでそこを30p掘り下げる。その穴の底に炭の粉を混ぜたお椀形の盛り土をし、その上に苗木の根を這わせ、根の上2pまで土を被せて一旦苗木を上下に揺する。これは根の周りにまんべんなく土が廻り込むようにするためだ。そして、土を被せた周りを足で踏み固め、苗木が固定したのを確認してから、元の地面と同じ高さまで盛り土をし更に足で踏み固める。最後に他の樹木と区別するためピンクのリボンを苗木に巻いて1本終了である。
私は狛江市からいらっしゃったというHさんとペアを組んだ。身長190p超はあろうかという大男で力強い味方になりそうだ(笑)。苗木を植える場所には杭が打ち込んであり、その場所を先程の手順に沿って作業をスタートさせる。私が鍬を振るい、Hさんがスコップで穴を掘り底に盛り土をする。私が苗木を置き土を被せた後、地固めは体重100キロ超と思われるHさんの役目だ。Hさんがリボンを付けている間に私は次の場所に鍬を振るう。炭焼き小屋があった名残か、大きなレンガが出てきたり、地中深く張った木の根に作業の行く手を阻まれることも多々あったが、1本ほぼ3〜4分のペースの流れ作業で順調に作業は進む。ところで、中腰でやるこの作業は案外腰への負担が大きい。やはり歳なのだろうか。山登りとはまた異なった筋肉疲労で腰が痛く、気温の上昇で汗が滝のように滴り落ちる。それでも、若いHさんの力添えでほぼ1時間、苗木10本を植えてお昼休みに突入である。
一旦下山し昼食タイムとなる。山登りとは違って、頭、顔、手、腕、カメラ全てが泥まみれとなっている。流れる小川で気休め程度に汚れを流し昼食とする。東電側からは温かいトン汁と冷たい麦茶のサービスがあり、これがまた汗を流した体には実に美味い。トン汁のお代わりをしてしまったほどだ(笑)。フィトンチッドのシャワーを浴びながら、そして竹内さんからの尾瀬に関するレクチャーを拝聴しながらの昼食は、明るい竹内さんの笑顔と相俟って、癒される空間と時間になったのだった。
さあ、午後1時。後半のスタートである。午後からは私がスコップ、Hさんが鍬の役割に交代する。手順はもう十分に分かっているので、淡々と作業は進む。腰の痛みと流れる汗に再び難儀しながらも30分程度で二人に渡された苗木は全て植え終わった。余った時間で他の班の手付かずの場所を応援するほどの余裕の終了であった。見回すと、打ってあった杭は全てがピンクのリボンを付けた苗木に変っていて、ホッとした安堵感とヤッタぞという達成感に包まれる。うんうん、疲れたけれど、何かしら自然のためにお返しが出来たという満足感がじわじわと込み上げてくる。
下山して道具と手や腕を洗い、午後2時竹内さんの挨拶で実働2時間の今回のボランティアはつつがなく終了した。ところで、フアンならタレントであろうが無かろうが誰しもサインが欲しいもの。こんな親父がとチョッと恥ずかしかったが、記念に竹内さんのサインを頂き赤面しながら帰路のバスに飛び乗ったのだった(笑)。
帰りは上毛高原駅まで直行の予定だったが、東電側の配慮で尾瀬ヶ原とは比較にならないほど小さいが、大清水のミニ湿原を見てから帰ることになった。水芭蕉は既に朽ちかけていたが、リュウキンカの花は今を盛りにと黄色い鮮やかな花を付けていた。有名な尾瀬ヶ原とは一山隔てた地域でのボランティアで、広大な尾瀬ヶ原を見ることは出来なかったが、今回の目的はあくまでもブナの植林だ。その目的が一先ず達成され充実感に溢れた一日となったのだった。
ブナは早いものでも、芽生えてから40〜50年しないと、花を着け実を結ぶようにはならないという。高さは80年から100年、太さは110年から130年位成長を続け、最大で高さ35m前後、太さは直径1.5m以上になることが知られている。今日植えた苗木がこのように成長する頃には、私は当然この世にはいないであろうが、結果は見れなくても、無事に根付きスクスクと育ってくれることを心から願って止まない。