年月日 2007/03/16(金) 天候 晴れ 場所 埼玉県秩父郡小鹿野町 ルート 両神・堂上節分草自生地⇒(15分)⇒薬師堂上駐車場→(60分)→福寿草園地→(60分)→両神温泉 歩行距離(3.0`)、所要時間2時間00分(休憩時間含まず) その他 日本一の規模と言われている秩父市両神村(現、小鹿野町)の節分草の自生地を訪ねました。関東以西の主に石灰岩地帯の落葉樹がある山林の緩やかな斜面に群生する節分草。茎の先端に白色の小さな花を一輪つけた姿は清楚で且つ可憐であり、群生する様はまるで小雪が舞い降りたような素晴らしい眺めです。なんてことを書きたかったのですが、暖冬の今年は既に群生全体が朽ち果ててしまっているという異常な状態でした。辛うじて生き長らえている数本を巡って撮影の順番待ちが。そんな折、こんな和歌を思い出しました。「花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに」小野小町
仕事が忙しく暫く山から遠のいていたら、いつの間にか今年も春の山野草の開花の時期になってしまっていた。厳冬の年であってもいち早く春の息吹を届けてくれる愛らしい花がある。その名を「節分草」という。節分草はキンポウゲ科の花で、節分の頃に花が咲くことから付けられた名前だが、2月の節分の頃に咲くのは稀で、ほとんどの自生地は3月になってからが盛りとなる。暖冬の今年は何時もより開花が早そうな気がして、既に盛りを過ぎてはいまいか些か心配であるが、私のために(?)首を長くして待っていてくれることを期待して出かけてみることにした(笑)。場所は秩父市の両神村(現、小鹿野町)。秩父へ出向く時は何時も西武鉄道、秩父鉄道を乗り継いで出かけていたが、今回は初めてバスツアーで向かうことにした。
心配された天気の崩れも小さく、ツアーバスは27人の参加者を乗せて8時40分に新宿を出発する。大きな渋滞も無くバスは関越道路に入り一路花園インターを目指す。通常バスの中では添乗員から挨拶やツアーコースの説明等があるのだが、今回も何時もと同様にそれは実行された。それはそれとして良いのだが、話の途中で添乗員からすまなさそうに『実は、節分草は全部枯れてしまって、1本も咲いてないそうです。』との思いもよらない一言が。w(☆o◎)wガーン!。恐れていたことが現実となってしまった。開花の遅いさすがの節分草も、この暖冬の影響で通常より2〜3週間も早く満開を迎えてしまったらしい。それにしても、節分草の写真を撮るのが最大の目的だった私が、何で節分草を見れないこのバスに今乗っているのかを考え始めると無性に悔しさが込み上げてくる。事前に分かっていた事だから、ツアー会社側もあらかじめその事実を知らせてくれていれば、このツアーはキャンセルして別の方向を考えることもできたのにと思う。これは詐欺だ、などと大仰なことは言いたくないが、今少し参加者の立場に配慮する対応も必要ではないかと思いつつ、憮然とした表情で中空を睨み続けた。
バスは花園インターを降り、道の駅「はなぞの」でトイレ休憩を取る。抜けるような青空と明るい春の日差しが眩しいが、対照的に私の心境は複雑だった。せめて、せめて一輪だけでも良いから咲いていてくれればと哀願にも似た気持ちになる。参加者のご婦人方は諦めが早いのか、道の駅に隣接するJA農産物直営所で思い思いに夕食の食材の買出しに奔走していらっしゃるご様子。その事をとやかく言う気持ちは毛頭無いが、人間其々に大切なものへの想いが異なるものだなァと改めて感じる。
バスは国道140号線を「節分草園」のある両神村堂上へ向けてひた走る。一般道へ降りてからのこの距離が相当に長い。秩父鉄道に沿ってほぼ1時間走った頃、やっと山あいの目的地に到着する。車窓からは、接写レンズを地面に向けて撮影しているカメラマンの姿がちらほらと見受けられ、もしかしたら辛うじて生き長らえている節分草があるのかもと期待が広がる。ところが、園に入って見渡してみると白い節分草どころか茶色の土と緑色の葉の広がりだけしか目に飛び込んでこない。しかし、良く良く目を凝らすと辛うじて生き長らえている、と言うより遅咲きらしき節分草が目に留まる。ところが、その数たるや余りにも少ない。ここに1本、数十メートル先にもう1本、という具合で群生地の体を成していない。その1本に数多くのカメラマンや観光客が集中するため撮影に順番待ちが必要で、私も持参した三脚などセットする余裕も無く、ピンボケも気にせず20分の停車時間の間に兎に角撮りまくる。そんな節分草園も来る18日で早々と閉園するという。そりゃあ、この状況では日本一の群生地として入場料を取るなんて出来る筈は無いのだから。思いがけない暖冬に翻弄されている人々の縮図がここにも垣間見られた。
数こそ少ないが一応節分草の姿をカメラに収め、次の目的地「四阿屋山」(あずまやさん)福寿草ハイキングコースへバスは向かう。ここからは添乗員が従わないフリーなハイキングとなり、午後3時半までに帰りのバスの待つ両神温泉薬師の湯まで戻れば良いという自由時間となる。聞くところによるとその福寿草も今や盛りを過ぎ、節分草と同様既に見る影も無いという。どちらかと言えば鉢植えで何処でも見られる福寿草は余り興味の対象ではないので、私は福寿草園を横目に標高771.6メートルの四阿屋山を登ってみることにした。
最初は連なって登っていた参加者も途中の福寿草園辺りで徐々に抜け始め、四阿屋山登山口からは私一人になってしまった。そこからは一人で意気込んで登ってはみるものの、予想を遥かに超える急勾配に悪戦苦闘を強いられやっとのことで両神神社奥社まで辿り着いた。ここで一服燻らせ再び腰を上げるが、その先最後に待ち受ける約50メートルの岩峰がこれまた凄まじいものだった。一方の登り口は滑落の危険があるので登山禁止となっているし、もう一方の登り口は急峻な鎖場となっている。意を決して鎖場に挑戦するが、片側が切れ込んだ断崖に恐怖感に苛まれ腰が引け思うように足が上がらない。時間だけが刻々と過ぎていき、このままでは帰りの時間までに薬師の湯に戻れないと判断せざるを得ない状況になってきた。半分くらい登ったところで、登るのも勇気、諦めるのも勇気などと勝手な理屈をつぶやいて自分を納得させ、今登ってきた岩場を引き返すことにした。
岩場から福寿草園まで戻り東屋で昼食を取る。妙に周りが静かだ。姦しいご婦人方の声がしないし、第一このツアーの集団が居ない。恐らく温泉に入るために早々と下山されたに違いない。今日は大汗を掻いていないので、温泉に入るつもりのない私は、僅かに残る春の草花を愛でながら暫し福寿草園に留まることにした。30分位そこで花を愛でていたであろうか、時計を見ながら腰を上げ私も下山を開始する。下山路は薬師堂コースを取るが、案外急な階段が続くので注意して下る。しかし、配布されたルート図に示されたポイントがなかなか見当たらない。周りに誰も歩いていないので尋ねることも出来ずやきもきしたが、結局ルート間違いではあったがどうにか薬師の湯に2時半にゴールできたのだった。
今年の記録的な暖冬のおかげで、暖房費など季節関連の費用負担が減って、家計は助かっているが、しかし一方では、自然の恵みを多く受ける農業やレジャー産業、季節商品を扱う小売業者は大きな影響を受けているようだ。正に今回のツアーもその影響をまともに被ってしまったようで、この時期既に朽ち果てた春の山野草に出会おうなどとは思いもよらなかった。やはり寒い時は寒く、暑い時は暑くあって欲しいし、こんな異常気象は今期限りにして欲しいものだ。いや、暑さの苦手な私は「暑い時は涼しく」あって欲しいのが本音だが(笑)。